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消毒と滅菌 北大病院感染対策マニュアルによると
消毒 とは人体に有害な微生物の感染性をなくすか,数を少なくすること で、
滅菌とは すべての微生物を殺滅させるか,完全に除去すること です。
ここで言う「微生物」はウイルスを含めたもので、「数を少なくする」というのは感染がおきなくなる量まで数を減らすということです。
すべての微生物を殺滅すれば消毒もしたことになりますので、感染を避けるためには消毒でも滅菌でも良いわけです。 一方、人体に有害か無害かにかかわりなく雑菌の繁殖を抑えたい食品発酵や飲料醸造の現場などでは、 利用する微生物の添加以前に滅菌をする作業がなされることになります。

殺菌と除菌 これらの用語中の「菌」はウイルスを含めた病原性微生物の総称と見なされることが一般的です。 殺菌は文字通り菌を殺すことで、除菌は菌を取り除くことです。 例えば、消毒効果のない水で菌を完全に洗い流せば除菌にはなりますが、殺菌にはなりません。 殺菌・除菌のいずれも消毒や滅菌と違って、対象となる菌や程度に関係なく用いられる言葉です。
薬機法(旧薬事法)により「消毒」と「殺菌」は医薬品や医薬部外品以外の商品広告に用いることを禁じられています。 ですから、洗剤や漂白剤などと同じ「雑貨品」に該当する次亜塩素酸水にの広告には「除菌」という言葉を用いることが多くなります。

不活化 本来もっている活性(機能)を失わせることです。 つまり、対象が何であってもよいわけですが、ウイルス・微生物や酵素など、 生命現象かかわる生物あるいは物質に用いられることが多い言葉です。 特に病原体に対しては感染性や病原性を失わせることを指します。

菌・細菌・バクテリア 菌とは本来キノコを指した言葉ですが、一般的には「微生物」という言葉と同様に漠然とした対象を示す言葉となってしまっています。 しかし、「菌類」という表現になると真核生物であるキノコやカビの類のことで、原核生物である細菌とは全く異なったものとなります。 くわしくは 森林研究・整備機構の明間民央さんの解説をご覧ください。
細菌という言葉は歴史的に英語の Bacteria(バクテリア)と同じ意味で使われてきましたが、 原核生物の中には系統の異なる古細菌(Archaea)が存在するとわかった現在では、狭義の細菌とか真正細菌という言葉をバクテリアと同じ意味で用いています。
真正細菌も古細菌もサイズがおよそ1マイクロメートル(0.001mm)と、人の細胞(およそ0.01mm)よりはるかに小さいですが、 ウイルス(0.02~0.3マイクロメートル)より大きく、栄養などの条件が整えば自己増殖ができます。 真正細菌としては感染症を引き起こすサルモネラ菌、コレラ菌のような危険なものや、 納豆菌や乳酸菌などの有用なものが良く知られていますが、 地球上には宇宙の星の数の一億倍の種類の細菌が存在すると言われており、そのほとんどは正体不明です。

ウイルス 遺伝子(DNA又はRNA)とそれを包むタンパク質の殻からなる微小な構造体です。 生物のように自分自身で栄養を吸収して増殖することはできませんが、感染した生細胞の機能を利用して増殖し、生物と非生物の中間に位置する存在です。 そのため通常の抗生物質は効かず、ウイルス性の感染症に対してはそれぞれのウイルス用に開発された抗ウイルス薬を用いる必要があります。
生命体以外のものに付着したウイルスは増殖できないので、紫外線・熱などの物理的刺激や消毒薬などの化学的刺激により容易に不活化されます。 例えばコロナウイルスは人間の生活環境では数分~数日間で絶滅するとされています。 しかし、刺激の少ない冷暗所などでは長期間生存可能で、永久凍土が溶けると未知のウイルスが大気中に放出されて新たなパンデミックを引き起こすという説もあります。

ウイルス力価 試料中に含まれる感染力をもつウイルス量を表す用語です。 感染力をもつウイルスの個数を数えることは事実上不可能なため、生きた細胞に感染させて、細胞に与える変化を観察することで測定されます。 測定方法によって、TCID50(50%培養細胞感染価)、ID50(50%感染量)、PFU(plaque-forming unit)などの単位で表されます。

TCID50 日本語では「50%培養細胞感染価」と表現する、ウイルスに感染した細胞の形状が変化する現象(細胞変性)を利用して測定するウイルス量の単位のひとつです。
ウイルス濃度を表す場合は試験液の量(mL)で割った TCID50/mL という単位を用います。 細胞を幾つもの容器で培養しておいて,ウイルス濃度を測定する試験液を段階的に希釈して、各容器にXmLずつ 接種していき,ちょうど半数の細胞が感染する希釈度がNであれば、この試験液のウイルス力価(TCID50/mL)はN/Xということになります。 もし接種料が0.1mLで、半数の細胞が感染する希釈度が100であれば、この試験液のウイルス力価は1000で、その対数つまり log10(TCID50/mL)は3です。

細胞傷害性、細胞毒性 英語では cytotoxicity といい、細胞を殺したり機能の一部を阻害する性質のことです。cytotoxicity を持つものには、強い酸やアルカリあるいは消毒薬などの薬剤、紫外線やX線などの波長が短い電磁波、サイトカインなどの免疫系の物質等々、様々なものがあります。

活性汚泥 酸素のあるところを好む(好気性)微生物により有機物を含む排水を浄化する際に、浄化槽の中で有機物の残渣と微生物が混ざり合った泥上の懸濁物質が発生します。 これを活性汚泥といい、この浄化技術を活性汚泥法といいます。 排水処理をうまく行うためには有機物を分解する能力の高い微生物を含む「適度な量の活性汚泥」が必要になります。

好気性・嫌気性 酸素のあるところを好む生物を好気性生物、酸素を必要としないか酸素を嫌う生物を嫌気性生物と表現します。 私たちが通常目で見ている生物の大部分は好気性で、嫌気性生物のほとんどは肉眼では見えない細菌です。 人類にとって有用な嫌気性細菌としては、良く知られているビフィズス菌や乳酸菌が、危険な細菌としてはボツリヌス菌や破傷風菌などがあげられます。

スカム 英語の scum のことで日本語では「浮きかす」とでも表現すべきもので、 もともとは料理の際に牛乳や煮汁などの表面に浮く膜やアクを指す言葉ですが、 排水処理の現場では浄化槽や沈殿池などの水面に浮いて固まったものの総称として使われています。 多量のスカムの発生は排水処理がうまくいっていないことを示します。

活性化石炭 低品位石炭を酸化処理することで得られる無数の微細な孔隙(穴)のある石炭のことで、活性炭とは異なります。 酸処理により、低品位石炭に含まれる不純物のうち、炭酸カルシウムなどの酸に溶けるものが溶け落ち、微細な孔隙を残します。 この孔隙が微生物にとって良い住み家(微生物担持体)になりますので、 活性汚泥法による排水処理の浄化槽には、 あらかじめ目的に合った微生物を植え付け済みの活性化石炭を入れることになります。

南極産酵母 アクトのwebやパンフレットで用いている「南極産酵母」とは、 第48次南極地域観測隊夏隊の産総研と極地研からなる研究チームが南の昭和基地から南に約65kmほど離れた露岩地帯から持ち帰り、 「ムラキア・ブロロピスSK-4」と呼ばれている酵母のことです。 この酵母は水温が4〜10℃前後で最も効率よく乳脂肪を分解するため、通常の微生物の活動度が落ちてしまう冬の北海道のような寒冷地での排水処理に効果的です。

ACTシステム (株)アクトが経済産業省の平成20年度地域資源活用型研究開発事業により開発した装置です。 この装置でパーラー排水中の難処理物質である脂肪粒を効率よく粉砕することにより、廃棄乳を20%含む排水をも処理することが可能になりました。 活性化石炭などを原料としたACTセラミックが装置の要となっています。